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佐賀地方裁判所 昭和31年(行)6号 判決

原告 出井繁俊

被告 佐賀県税事務所長

主文

被告が佐賀市白山町安河内文平の滞納に係る別紙第一号第二号目録記載の各県税につき地方税法第十一条の三第一項により昭和三十一年六月二十日原告に対して為した転負処分は金三十八万六千百三十二円の処分を取消す。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを三分しその二を原告の負担としてその一を被告の負担とする。

事実

第一申立

一、原告の申立

被告が佐賀市白山町訴外安河内文平の滞納に係る別紙第一号第二号目録記載の各県税につき地方税法第十一条の三第一項により昭和三十一年六月二十日原告に対して為した転負処分はこれを取消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

二、被告の申立

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第二主張

一、原告の主張

(一)  佐賀市白山町訴外安河内文平は佐賀県に対し別紙第一、第二号目録記載の遊興飲食税及び事業税を滞納した。

(二)  被告は原告が同訴外人の二男であつたところから原告が同訴外人より同訴外人所有の佐賀市高木瀬町大字高木三ツ溝宿七十一番壱、宅地八十五坪六勺、同所家屋番号弐参四番木造瓦葺平屋建居宅建坪四十坪並附属、家屋番号同番木造瓦葺平屋建工場建坪三十九坪(以下本件宅地並改築前の建物と称す)を無償若しくは著しく低い額の対価で譲受けたものとして地方税法第十一条の三第一項により昭和三十一年六月二十日附原告宛の納付通知により同訴外人の前記滞納に係る遊興飲食税並に事業税の合計金九十九万四千六百三十七円の納付義務を本件宅地並同所家屋番号弐参四番木造瓦葺二階建店舖兼居宅建坪四十二坪七合五勺外二階二十六坪六合(以下改築後の建物と称す)の価格を限度として原告に転負せしめた。

(三)  然しながら右転負処分は違法のものである。

即ち本件宅地並、改築前の建物は元訴外野田辰雄の所有であつたものを原告が同訴外人より昭和二十八年三月二十六日代金三十万円で買受けこれが所有権を取得したもので訴外安河内文平よりこれが所有権を取得したものではなく右代金を訴外野田の代理人であつた訴外安河内文平に支払済である。

仮りに原告が訴外安河内より本件宅地並改築前の建物の所有権の移転を受けたものとしてもこれは贈与ではなく金三十万円の対価を以て為された売買であつて右売買当時の本件宅地並改築前の建物の時価は金三十万円か若しくはそれ以下のもので著しく低額の対価で譲受けたものでもない。

仮りにしからずとしても地方税法第十一条の三により転負し得る税金の納付義務は贈与又は譲渡の目的たる財産の譲渡当時の価格即ち本件宅地並改築前の建物の贈与又は譲渡当時の価格金三十万円の限度である。そもそも本件宅地建物はその後昭和二十九年六月頃原告が原告の出費により本件建物を造改築しその価値を増加せしめておるが造改築による価値増加分については転負処分はなし得ないものであるのに原処分は造改築後の本件宅地建物の時価を限度として金九十九万四千六百三十七円の金額を以て転負処分をなしているので失当である。

仮りに造改築費用の一部を訴外安河内文平が負担したとしても右負担は同訴外人が自己の積極財産を減少せしめることによつてなしたものではなく材料代等の未払という債務の負担という形でなしたものであるから地方税法第十一条の三にいう「差押を免れる為」ということとは関係ない。

以上の通り被告のなした前記転負処分は違法のものであるので原告は昭和三十一年七月二十一日右転負処分に対し異議を申立てこれが取消を求めたが被告は地方税法第十一条の三に該当するものとして昭和三十一年八月十八日右異議申立を棄却した、よつて前記転負処分の取消を求める為本訴請求に及んだ。

二、被告の主張

(一)  原告の請求原因事実(一)項は認める。

(二)  原告の請求原因事実(二)項は認める。

(三)  原告の請求原因事実(三)項中本件宅地並改築前の建物は元訴外野田辰雄の所有であつたこと、原告が昭和三十一年七月二十一日被告の為した本件転負処分に対し異議の申立を為したこと、被告は昭和三十一年八月十八日右異議申立を棄却したことは認める。その余の事実は否認する。

本件宅地並改築前の建物は訴外安河内文平が訴外野田辰雄に対して有していた金二十五万円の債権の代物弁済としてこれが所有権を取得したが同訴外人は佐賀県に対し原告主張の如き遊興飲食税及事業税を滞納していたので計画的に財産の差押を免れる為本件宅地並改築前の建物を無償で、仮りにしからずとするも著しい低い額の対価で原告に譲渡したもので、その使用関係は依然として同訴外人に於て留保し更に同訴外人は右遊興飲食税等の滞納による財産の差押を免れる為自己の出費により本件建物を修理改造したものであるが、これにより生じた利益は所有者たる原告が受けていることになるので被告は本件宅地並に改築後の建物に対する被告の原告宛納付通知書発送当時の時価を限度として原告に対し転負処分をなしたものであつて転負処分に何等の違法はない。

第三立証〈省略〉

理由

佐賀市白山町訴外安河内文平は佐賀県に対し別紙第一、第二号目録記載の遊興飲食税及び事業税を滞納したこと、原告は同訴外人の二男であること、被告は原告が同訴外人所有の本件宅地並改築前の建物を無償、若しくは著しく低い額の対価で譲受けたものとして地方税法第十一条の三第一項により昭和三十年六月二十日附原告宛の納付通知により同訴外人の前記滞納に係る別紙第一、第二号目録記載の遊興飲食税並に事業税合計金九十九万万四千六百三十七円の納付義務を原告に転負せしめたこと、原告は昭和三十一年七月二十一日本件転負処分に対し異議を申立、これが取消を求めたが昭和三十一年八月十八日右異議申立を棄却されたことは当事者間に争いのないところである。そこで被告のなした本件転負処分が違法のものであるか否かについて按ずるに先ず原告は本件宅地並改築前の建物の所有権は訴外野田辰雄から原告に直接移転されたもので原告は訴外安河内文平よりこれが所有権の移転を受けたものではないから本件転負処分は違法である旨主張し被告に於てこれを争うのでこの点について判断するに、証人野田辰雄、同安内文平、同坂本秀俊、同安河内文雄、同野田初一、同北川実、同井手貞雄、同古賀繁太郎の各証言並に原告本人尋問の結果によれば訴外野田辰雄は訴外安河内平より昭和二十三年頃商売の資金として金十万円、その四ケ月位後に更に金五万円をそれぞれ借受けたこと、更に訴外野田辰雄はその頃訴外西日本相互銀行から金十万円を借受けていたがその内金七千円についてこれが支払が出来なかつた為右訴外安河内が訴外西日本相互銀行の債務金七万円を訴外野田に代り訴外銀行支払つていること、その後更に訴外野田は訴外安河内より昭和二十四年暮頃金五万円、昭和二十五年六月頃金三万円をそれぞれ借受け結局訴外安河内に対し計金三十万円の債務を負担していたこと、そこで右両名がこれが弁済について話合つた結果当時訴外野田の所有であつた本件宅地並に改築前の建物を他に売却して右売却代金を以て右金三十万円の債務の弁済に当る旨話が極り両名は協力して自ら又は新聞広告に掲示したり不動産売買周旋業者訴外野田初一を通じ他に売却先を探したところ金二十七万円乃至三十万円程度で買手も三四人あつたもののいずれも話がまとまらず代金三十万円位では売却することが出来なかつた。そこで止むを得ず訴外安河内文平が訴外野田辰雄に対する前記債権金三十万円の代物弁済として本件宅地並改築前の建物の所有権を取得し結局本件宅地並に改築前の建物の所有権は訴外野田辰雄より訴外安河内に移転したことが認められ、右認定事実と成立に争いのない甲第一号証の一、二を綜合すれば本件宅地並に建物は訴外野田辰雄より直接原告宛昭和二十八年三月二十六日附売買を原因として昭和二十八年九月二日附を以て所有権移転登記手続が経由されているがこれは中間の登記手続を省略したものと認められ他に右認定を覆すに足る証拠はない。

次に原告は訴外安河内より本件宅地並に改築前の建物を金三十万円の対価を以て買受けたものであつて右買受け当時の本件宅地改築前の建物の時価は金三十万円若しくはそれ以下であつて著しく低額の対価で譲受けたものでない旨主張し、被告は訴外安河内文平は別紙第一、第二号目録記載の滞納した遊興飲税等により財産の差押を免れる為本件宅地並改築前の建物を原告に無償で譲渡したか仮りにしからずとするも著しく低い対価で譲渡したものである旨主張するのでこの点について判断するに前記認定の通り本件宅地並に改築前の建物について訴外野田辰雄並に安河内文平が他に買主を物色した際金三十万円以上には買手はなかつたことより考えれば本件宅地並に改築前の建物の昭和二十八年頃の時価が金三十万円程度であつたことが認められる。ところで成立に争いのない乙第三及び第四号証並に県の吏員の署名押印の成立に争いがないので全体として真正に成立したと認められる乙第十一、第十三、第十五号証並に証人藤村文代、同時津卯太郎、同森素直、同永井繁人、同周奎壁の各証言によれば訴外安河内文平は終戦後佐賀市白山町で米国軍隊の進駐軍専用のキヤバレー「オクラハマ」を経営していたが進駐軍も減り昭和二十八年頃には開店休業状態となつた。その間同訴外人は昭和二十七年三月十六日国税の滞納により佐賀税務署よりキヤバレー「オクラハマ」の衣類、什器、備品等動産一切の差押を受け公売処分に付されたので電話の競落人より右競落物件が借りてその後もキヤバレー「オクラハマ」を辛じて経営していたこと、本件宅地建物並に改築後の建物においての特殊喫茶店一楽及び右一楽廃業後の旅館一松の経営は原告名義になつていたが、その実体は訴外安河内文平が同建物に内縁の妻と同居して右一楽を経営していたこと、訴外安河内文平に事業税等の滞納があつたので佐賀県税事務所吏員訴外時津卯太郎が本件宅地並に建物につき調査すべく訴外安河内方を訪れた際調査に応ずる訴外安河内の態度に誠意がなく調査の結果も要領を得ず、その際訴外安河内は訴外時津に対し本件宅地建物は原告が買つたものであるとは主張もせず原告は自己の義理の息子で実娘治子の婿であつて本件宅地並建物の購入及び改築の費用は全て原告の実家から百万円位出ている旨虚偽の供述を為したこと。更に原告も昭和三十一年七月四日被告が原告に対してなした本件転負処分に対し佐賀県税事務所に不服を申立に来た際係員に対し、自分は養母に当る出井ジツが死亡したので右出井ジツの遺産百万円を相続しその内から金三十五万円を実父である訴外安河内に渡したものでそこで金三十五万円のかたに本件宅地並建物の所有権を取得したものである旨述べたので佐賀県税事務所吏員永井繁人が同年八月三日右出井ジツの住居地を管轄する博多税務署に於てその遺産相続に伴う相続税課税の有無について調査した結果前記原告の申出は虚偽のものであつたことが各認められ、その上後記認定の通り本件宅地建物の改築は原告に於てその大部分を原告の出費によりなしていることを考え合せれば訴外安河内文平は前記認定の通り嘗て、税金の滞納で差押を受けた若い経験もあり本件宅地並に改築前の建物の所有権を訴外野田辰雄より取得した当時、別紙一、二号目録記載の各県税を滞納していたのでこれが差押を免れる為本件宅地並改築前の建物を原告に贈与したことが認められる。右認定に反する証人安河内文平、同坂本秀俊、同安河内文雄の各証言原告本人尋問の結果は前記認定に照し措信し難く証人野田辰雄の証言並に成立に争のない甲第六号証の一乃至九は証人周奎壁の証言に照し原告が本件土地及改築前の建物を訴外安河内文平より代金三十万円で買受けたものであることを認める証拠となし得ない。他に前記認定を覆すに足る証拠もない。次に原告は本件転負処分は贈与当時の本件宅地並に改築前の建物の時価金三十万円を限度としてのみなし得るものであり仮りにしからずとするも本件建物はその後昭和二十九年十一月頃原告が原告の出費に於て造改築したものであるから造改築による価値増加部分については転負処分をなし得ないものである。仮りに造改築の一部を訴外安河内文平に於て負担したとしても右負担は同訴外人が自己の積極財産を減少せしめることによりなしたものではないから本件宅地並造改築後の建物の時価を限度としてなした金九十九万四千六百三十七円の転負処分は金三十万円を超過した部分に於て違法である旨主張し被告は訴外安河内文平が別紙第一、第二号目録記載県税の滞納による差押を免れる為同訴外人の出費により本件建物を改築したものでこれにより生じた利益は所有者たる原告が受けるのであるから転負処分は本件宅地並改築後の建物の時価を基準としてなし得るものである旨主張するので先ず本件建物の改築は原告に於てなしたものであるか訴外安河内に於て為したものであるか否かについて判断するに成立に争いのない甲第二号証の一、二甲第三、第五号証、証人安河内文平、同坂本秀俊、同安河内文雄、同古賀袈裟一、同服巻恵、同水田栄之助、同井手貞雄の各証言並原告本人尋間の結果によれば本件建物の改築工事は昭和二十八年十一月頃着工し昭和二十九年六月頃竣工していること、右改築は本件建物中住宅部分の一部を除き改築の程度も全部解体して大々的になされたこと、原告は実兄に当る訴外安河内文雄に昭和二十八年五、六月頃本件建物の改築費用の金借方を懇請しその結果その頃右実兄より金十万円昭和二十九年一二月頃本件建物の造作費用として金五万円、その後金二十万円の融資を受け更に昭和二十九年九月頃福岡相互銀行より金五十万円の融資を受けていること、本件建物の改築費用の約十六万円相当の材木についても原告が訴外古賀袈裟一に注文して同訴外人より買受け、原告に於て右代金の弁済の為に同訴外人宛に金七万七千九百二十五円と、金八万九百十五円の約束手形二通を振出していること、原告は昭和二十九年二月二日頃本件建物の改築費用の不足分として同訴外人より金七万円を借受けていること、また原告は訴外服巻恵より本件建物の改築資金として昭和二十八年十一月頃金十五万円の融資を懇請し同訴外人より右金十五万円を借受けていること、本件建物の改築工事をした大工訴外井手貞雄の手間賃についても本件建物の改築資金として原告の義姉の所有家屋を担保とし訴外井手貞雄、同古賀の保証のもとに訴外長崎相互銀行より金四十五万円を借受け右金員を以て訴外井手貞雄の手間賃約金二十万円を支払つていることが認められる。そうだとすると本件建物の改築は原告に於てなし、その改築費用も大部分を原告に於て出費していることが認められ右認定に反する乙第七、第十、第十五号証は前記認定に照し措信し難く証人井手貞雄の証言中昭和三十二年十二月工事代金残金二、三万円を貰つた分は訴外安河内文平が出したものと思う旨の供述部分も推測程度のもので直ちに措信することは出来ない。そうだとすると原告の出損行為により本件建物の価格が増加したものであるから右増加分については原告を第一次納税義務者として転負処分は出来ないものと解するところで本件土地及改築後の建物につき訴外安河内文平の出損による改築部分が含まれているか否かについて検討すると県吏員の署名押印の成立に争いがないので全体として真正に成立したと認められる甲第十二号証の一、成立に争いのない甲第十二号証の二、三、証人安河内文平(措信し難い部分を除く)同片渕善之の証言によれば訴外片渕建材株式会社は本件建物の改築に要した金十六万七千二百七十七円相当のセメント、タイル、左官材料等の建築材料を訴外安河内文平の注文により同訴外人名義に売渡したがその後同訴外人に於てその残債務金十二万八千三百十円の支払を怠つた為同訴外会社より訴を提起され、その結果訴外安河内に於て右訴外会社に対し右金十六万七千三百七十七円の内金十万四千二百七十七円を支払つていることが認められ右認定に反する証人安河内文平、原告本人尋問の結果は前記認定に照し措信し難く他に右認定を覆すに足る証拠はない。次に県吏員の署名押印の成立に争いがないので全体として真正に成立したと推認される乙第八号証、証人古賀繁太郎の証言によれば訴外古賀繁太郎は金十万円相当の建具を本件建物の改築用として訴外安河内文平の注文により同訴外人に売買し、その建具代は同訴外人に請求した結果同訴外人より八万五千円位の支払を受けたことが各認められるので結局本件建物の改築に要した建築材料代中訴外片渕建材株式会社に支払つた金十万四千二百七十七円及び建具代中訴外古賀繁太郎に支払つた金八万五千円の合計十八万九千二百七十七円は訴外安河内文平の積極財産の減少により同訴外人に於て支払つたこと、その他の改築費用については原告に於て出費していることが認められる、そうだとすると結局訴外安河内文平は前記認定に徴し同訴外人の別紙第一、第二目録記載の県税の滞納による財産の差押を免れる為同訴外人の出損により同訴外人の積極財産金十八万九千二百七十七円を減少せしめその結果右造改築により本件建物に附合した価値を増加させたものであるから特段の事情なき限り右金十八万九千二百七十七円について本件建物の価値が増加したものというべく訴外安河内文平の出損に基因する改築による本件建物の価値の増加部分金十八万九千二百七十七円についてはこれが利益を受ける原告に対し転負処分をなし得るものと解する。そこで次に本件転負処分による第二次納税義務を算定する為本件宅地建物の価額の算定時期について判断するに或は譲渡時の当該財産の時価又は当該財産の現実の公売による売却価額をいうとする見解もあるが元来納税人が財産の差押を免れんとして当該財産を贈与又は著しく低い価額で譲渡した場合に於て、受贈者又は譲渡を受けた者に対し右贈与又は譲渡により納税人が差押を免れた当該財産の現に有する価額を対象とし第二次納税義務を負わせるものでこれが納付通知により受贈者又は譲渡を受けた者の第二次納税義務が具体的に確定するものであるから第二次納税義務者の納税義務の範囲を画する当該財産の価額も納付通知書を発した時の当該財産の適正な時価と解するを相当とする、そうだとすると成立に争いのない乙第一号証の一によれば原告に対し昭和三十一年六月二十日附を以て納付通知書を発していることが認められるので本件宅地及び改築をしていない家屋番号弐参四番二木造瓦葺平屋建居宅建坪十五坪の昭和三十一年六月二十日当時の時価は鑑定人古賀廉章の鑑定の結果によれば本件宅地は金三十二万三千二百二十八円で、改築していない建物は金九万六千円であるので合計金四十一万九千二百二十八円であることが認められるが改築された家屋が納付通知書発送当時に改築されていない状態における時価については何等立証がないので結局本件転負処分は前記金四十一万九千二百二十八円と前記訴外安河内の出損による本件建物の価値の増加部分金十八万九千二百七十七円の合計金六十万八千五百五円の範囲内に於て適法であつたところ被告が原告に対し金九十九万四千六百三十七円について転負せしめたことは当事者間に争いがないので右転負処分はその超過する金三十八万六千百三十二円の範囲内に於て違法であるというべくよつて被告が佐賀市白山町安河内文平の滞納に係る別紙第一第二目録記載の各県税につき地方税法第十一条の三第一項により昭和三十一年六月二十日原告に対してなした転負処分は金三十八万六千百三十二円の部分を取消し、その余の請求は理由がないので棄却し訴訟費用の負担については民事訴訟法第九十二条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 原田一隆 末光直己 西村四郎)

(別紙目録省略)

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